NHKのBS4K・BS8K予算は500億円。負担しているのは【契約者全員】です

NHKの衛星放送の問題
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はじめに

こんにちは、草津会計士blogです。

今回は、NHKの4K8K衛星放送に関する情報をまとめていきたいと思います。

すでにNHKのBS4K・BS8Kの放送が始まっていて、その放送のために国民全員の受信料が多額に使われていることをご存じの方は意外と少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、4K8K放送が世間にどれくらい普及しているのか、NHKの4K8Kのために受信料がいくら使われているのかということをまとめました。

4K8K衛星放送の普及状況

まずは、4K8K衛星放送は世間にどれだけ普及しているのかを見ていきましょう。

A-PAB(一般社団法人放送サービス高度化推進協会)というところが、4K8Kに関する視聴状況やテレビの普及状況などについてアンケート調査を実施しています。最新2019年7月時点の調査結果(*1)をもとに、一体どれくらいの人が4K8K放送を視聴できる環境にあって、どれくらいの人が実際に視聴しているのかを見ていきましょう。

そもそも、4K8K放送はどうやったら見ることができるか

まず前提として、4K8K衛星放送はどうやったら見ることができるのでしょうか。

簡単にまとめると、4K8K衛星放送を見るためには以下の機器が必要なようです。

  • 4K(8K)チューナー内蔵テレビ
    テレビは「4K(8K)チューナー内蔵テレビ」が必要です。なお分かりにくいですが、「4K(8K)対応テレビ」というものには対応チューナーが内蔵されていないので、別途外付けチューナーを購入する必要があるようです。
  • BSアンテナ
    放送の種類によっては、今までのBSアンテナで受信できる放送(NHK4Kなど)と新しいBSアンテナが必要となる放送(NHK8Kなど)に分かれるようです。

詳しいことはこちらのサイトをご覧ください。

4K8K放送を自宅で視聴できるテレビを持っている人は全体の6%

アンケートによると、4K8Kテレビの所有内訳は次の通りでした。

  • 4Kチューナー内蔵テレビ:4.3%
  • 8Kチューナー内蔵テレビ:0.9%
  • 4K対応テレビ     :5.2%
  • 8K対応テレビ     :0.7%
  • 持っていない      :90.1%

このうち「4K対応テレビ」と「8K対応テレビ」は、対応チューナーがなければ4K8K放送を受信することはできません。別の質問(4K8Kチューナー導入意向)によると、4K8K対応テレビを所有している人のうち、「すでに対応チューナーを設置済みである」と答えた人は13.3%です。つまり4K8K対応テレビと対応チューナーを両方持っている人は(5.2%+0.7%)×13.3%=0.8%ということになります。

ここから考えると、自宅で4K8K衛星放送を視聴できるテレビを持っている人は全体の6%程度ということになります。ただし、4K8K衛星放送を視聴するためには、対応するアンテナが設置されている必要がありますので、実際に見ることのできる環境にある人はもっと少ないと思われます。

4K8K放送を自宅で視聴したことのある人は全体の2%

また別の質問(新4K8K衛星放送視聴経験)によると、新4K8K衛星放送を視聴したことのある人は4.0%でした。しかし、このうちどこで視聴したかという質問に「自宅」と答えた人の割合は52.8%で、次いで「電気店の店頭」が41.7%となっています。

ここから考えると、自宅で4K8K衛星放送を視聴したことがある人は全体の2%程度ということになります。

NHKの4K8K衛星放送について

NHKの4K8K衛星放送にかかる費用は?

それでは、NHKは4K8K衛星放送にどれくらいのお金を使っているのでしょうか。

2018年12月1日にNHKはBS4K、BS8Kの放送を開始しました。

BS4Kでは、「超高精細映像を身近に触れてもらう”スーパーハイビジョンの入り口”と位置づけ、幅広いジャンルの番組を編成します」として、一日18時間を基本とする番組を放送しています。NHKの公表値(*2)によると、2019年度のBS4Kの制作費予算は403億円です。

BS8Kでは、「ハイビジョンの16倍の画素数を誇る超高精細映像と22.2マルチチャンネルが生み出す臨場感あふれる迫力の音響を最大限に生かした、これまでにない”未知の映像体験”を提供します」として、一日12時間10分を基本とする番組を放送しています。NHKの公表値(*2)によると、2019年度のBS8Kの制作費予算は101億円です。

BS4KとBS8Kを合計すると504億円となり、チャンネル全体の制作費予算(5579億円)の約1割になります。

NHKの4K8Kの費用を負担しているのは誰?

このようにNHKはBS4KとBS8Kの合計で500億円ものお金を使っているのですが、このお金はもちろん私たちの受信料から使われています。そして、この負担をしているのはNHKと契約している人全員です。

「衛星放送なんだから衛星契約の受信料を使ってるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしNHKは、受信料のうち地上分と衛星分の使用目的を区分して開示していません。(平成24年度までは「事業収支のうち衛星放送に係る収入と経費」という情報を出していましたが、それ以降はなくなりました)

そもそも、NHKの契約の種類(地上契約、衛星契約)は、その「放送を受信できる設備を設置しているか」ということで決まります。そして、通常の衛星放送と4K8K衛星放送では、放送を受信するための受信設備が違います。そのため、受信設備の種類と契約の種類をまとめると次のようになります。

  • 地上放送を受信できる受信設備 → 地上契約
  • 衛星放送を受信できる受信設備 → 衛星契約
  • 4K8Kを受信できる受信設備 → (なし)

今後新たな契約体系をつくるのかもしれませんが、現在のところはNHKとの契約者全員で約500億円の費用を負担しているという構図になっています。

おわりに

このように、NHKは徴収した受信料のうち500億円を使って、まだ2%の国民しか自宅で見たことのない4K8K衛星放送を流しています。

たしかに、新しいサービスを普及させるためには、最初に損失を覚悟の上で多額の投資をして、徐々に利用者を増やしていく形になるのは仕方ないことだと思います。

しかし、これをNHKが行う必要があるのでしょうか。

総務省のサイト(*3)を見ると、4K8Kロードマップというのが示されており、東京オリンピックが開催される2020年には「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K放送を楽しんでいる」という目指す姿が書かれています。また、2016年に閣議決定がされた日本再興戦略(*4)でも、「2020年に全国の世帯の約50%で視聴されることを目指し、2018年の衛星放送における実用放送開始など4K8Kを推進する。」と掲げられています。

このような公共放送と関係しない政府の施策のために、NHKが私たちの受信料を使ってまで放送を継続する意味はないでしょう。また、このまま受信料を使って4K8K放送を続ければ、4K8Kを見れない、もしくは興味のない国民からの不満も高まるでしょう。

NHKの衛星放送そのもののあり方というのを考えなおす時期に来ていると思います。

【脚注】

(*1) A-PAB深田恭子さんを迎えて記者発表会開催 4K8K視聴可能機器台数など公表 | 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)

(*2) NHK INFORMATION「平成31年度収支予算、事業計画及び資金計画」

(*3) 総務省|4K放送・8K放送 情報サイト

(*4) 決定等 – 日本経済再生本部

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