はじめに
こんにちは、草津会計士blogです。
今回の記事では「NHKが受信料で集めたお金を何に使っているか」ということを取り上げます。
私たちが一年間でNHKに支払っている受信料を合計するとおよそ7,000億円になり、このお金を使ってNHKは公共放送を行っています。それにしても7000億円もの大金が具体的に何のために使われているのか、受信料を支払っている私たちとしては気になるところですよね。
ということで、今回はNHKが公表している資料から分かる、直近2018年度の費用の中身を詳しく解説していきます。
NHKの事業支出の内訳
出典:平成30年度決算概要(単体・連結)P9より(*1)
まず、NHK全体でかかった費用を表す「事業支出」の合計は7,060億円です。
そして、この事業支出の内訳を業務内容ごとに分けると、次のとおりです。
- 「国内放送番組の制作と送出」5,434億円(77.0%)
- 「国際放送番組の制作と送出」297億円(4.2%)
- 「受信契約及び受信料の収納」773億円(11.0%)
- 「受信サービス活動」31億円(0.4%)
- 「広報活動」71億円(1.0%)
- 「番組・放送技術の調査研究」168億円(2.4%)
- 「事業の管理」260億円(3.7%)
- 「財務費・特別支出」21億円(0.3%)
これを見ると、国内番組の制作等にかかる費用(国内放送番組の制作と送出)が全体の77%と大きな割合を占めています。この内容は、次の項で詳しく見ていきます。
その次に、受信契約や受信料の回収等にかかる費用(受信契約及び受信料の収納)が11%と大きな割合になっています。これはつまり、受信料のうちの1割以上が放送と直接関係のない契約や回収のために消えていることになります。集金人制度の問題については、以前の記事「【第1回】NHK集金人不要論ー集金人廃止で受信料は2割減らせる」でも詳しく解説していますので、よろしければご一読ください。
国内番組の制作費の内訳
先ほど見た国内番組の制作等にかかる費用(国内放送番組の制作と送出)は、「①番組制作に要した費用」と「②その他の共通経費等」に分けられます。
①番組制作に要した費用
「番組制作に要した費用」は、実際に番組を制作するために直接かかった費用で、合計額は3,475億円です。そして、これを番組のジャンル別に分けると次のようになります(カッコ内は「番組制作に要した費用」に占める割合)。
- 「報道・解説」1,090億円(31.4%)
- 「スポーツ」692億円(19.9%)
- 「生活社会情報」306億円(8.8%)
- 「青少年・教育」207億円(6.0%)
- 「教養・福祉」181億円(5.2%)
- 「科学・自然」130億円(3.8%)
- 「ドラマ」355億円(10.2%)
- 「エンターテインメント・音楽伝統芸能」295億円(8.5%)
- 「映画・アニメ」78億円(2.3%)
- 「大型企画」136億円(3.9%)
ここからは、割合の大きい「報道・解説」、「スポーツ」、「ドラマ」について詳しい内容を見ていきます。その他についても詳しく知りたい方は、NHKのウェブサイト「平成30年度決算概要(単体・連結)」P13をご覧ください。
報道・解説 1,090億円(31.4%)
「報道・解説」の制作費は、「国内外で24時間体制で取材を行う経費のほか、ニュース映像を送るための回線料など」で構成されています。
主な番組名等は、「NHKニュースおはよう日本」、「NHKニュース7」、「ニュースウォッチ9」、「日曜討論」、「BSニュース」、「NHK手話ニュース」が挙げられます。
スポーツ 692億円(19.9%)
「スポーツ」の制作費は、「MLB、プロ野球をはじめとするスポーツの放送権料や中継経費など」で構成されています。
主な番組名等は、「サンデースポーツ2020」、「テレビ体操」、「スポーツ中継(プロ野球 MLB Jリーグ PGA 大相撲 高校野球 等)」が挙げられます。
ドラマ 355億円(10.2%)
「ドラマ」の制作費は、「衣装やセットなどの美術日、出演料・脚本料や海外ドラマの放送権料など」で構成されています。
主な番組名等は、「大河ドラマ」、「BS時代劇」、「海外ドラマ」、「ドラマ10」、「連続テレビ小説」が挙げられます。
②その他の共通経費等(1,964億円)
「その他の共通経費等」は、「ラジオ番組の制作費や全国のご家庭まで電波をお届けするための送出・伝送経費、さらに各番組の制作に必要な共通経費」で、合計額は1,964億円です。分かりやすく言い換えると、放送を行うためにかかる費用で番組制作に直接関連しないものなどという風に考えるといいと思います。
その他の共通経費等の内訳は明記されていないのですが、資料から推測するとこのようになるのではないかと考えています。
- ラジオ番組の制作費:286億円
- 伝送経費:370億円
- 人件費・減価償却費等の共通経費:1300億円程度
おわりに
ここまでの内容をまとめたものが、以下の図です。
この図では、事業支出7,060億円のうち、それぞれの項目がどれくらいの割合を占めているのかを「%」欄で分かるようにしています。つまり、この「%」欄の数字で「受信料が何に使われているか」の割合を見ることができます。
つまり、私たちの受信料が主に何に使われているかというと、番組の制作費用として「報道・解説」に15%、「スポーツ」に10%、「ドラマ」に5%、番組の制作費用以外として「放送を行うための共通費(人件費・減価償却費など)」に28%、「受信料の回収等」に11%が使われているということになります。
このようにしてみると、共通費や回収コストを削減して最低限の公共放送に集中すれば、どのくらいの規模になるかということが何となくイメージができそうですね。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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