はじめに
こんにちは、草津会計士blogです。
この記事では、「なぜNHKは受信料を無駄に使ってしまうのか」を解説します。
NHK職員が高給取りだとか、ドラマの制作費が高すぎるという意見は多く聞かれますし、もっと効率よく経営を行って今よりも受信料を減らすことができるはずと思っている方もいるかと思います。しかし、このような国民の声に反して、実際にはNHKの事業支出は年々増え続けているという事実があります。国民のために存在しているはずのNHKが、このように高コスト体質、金満体質、無駄遣いなどと言われてしまうのは、一体何故なのでしょうか。
その根本的な原因は、NHKという組織が抱えるジレンマにあると考えられます。この件に関しては他の記事でも書いているのですが、皆さんに分かりやすく読んでもらえるように、今回は学園ドラマ風のストーリーでお届けしたいと思います。
このストーリーでは、学園祭を来月に控えた2人のクラス委員が主人公として登場します。彼らはそれぞれどのような状況に置かれていて、どうしてこのような行動を取ったのでしょうか。皆さんもぜひ、登場人物の気持ちになって考えてみてください。
ストーリー本編
2年N組のクラス委員のドーモト君は、担任から職員室に呼ばれました。
N組担任「来月の学園祭のことなんだが、うちのクラスでは劇の発表をすることになった。この劇は、学園の方針で生徒たちに道徳を学んでもらうために、全員参加というルールで毎年行っているものだ。入場券は一枚500円で、当日学園祭に来ている生徒たち全員に、君たちで売ってもらうことになる。劇にかかる経費は、必要であれば収入の範囲で自由に使ってもらって構わない。ちなみに、収入から経費を引いた金額に余りが出た場合は生徒に返金し、来年からの入場料もその分値下げすることになっている。
とにかく、生徒の役に立つ劇をやること、それから全員から入場料を回収することを目標にして進めてもらいたい。」
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2年T組のクラス委員のキミシマ君も、職員室に呼ばれてこう言われました。
T組担任「あー、来月の学園祭でやる劇のことだがね。今回はおまえたちが社会に出た時のために、お金を稼ぐということはどういうことかを学んでもらいたいと思ってる。細かいことはとやかく言わないが、入場券は一枚1000円で自由参加ということだけは決めておこう。劇にかかる経費は、儲けを出すために必要と思うものに自由に使ってみなさい。ちなみに、収入から経費を引いた金額に余りがでたら、その儲けの半分で打ち上げに連れていってやろう。
とにかく、できるだけたくさんお金を稼ぐことを目標にして考えながら進めてみるといい。」
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N組のドーモト君は、経費の使い方を決めるためにクラス会議を開きました。
ドーモト「昨年は全校生徒1000人のうち600人が入場券を買ったので、30万円の収入があったそうです。それを参考にして、経費の予算は30万円としておきましょう。この予算を何に使うかですが、まず第一に考えるのは入場料の回収率を上げることです。学園祭に来ている生徒の中には、どうせ見に行かないからと言って入場券の買い取りを拒否する者もいるそうです。あと、これは先生から聞いたのですが、最近タチバナというヤンキー生徒が他の生徒を集めて過激な反対活動を行っているらしいですね。これにはできるだけ関わらない方がいいでしょう。」
生徒A「全員が入場券を買うってのはルールで決まってるんだから、やっぱり力づくで取り立てるのが一番だよなー。あ、そうだ!隣のクラスのミヤザキ君に頼んで、学園祭当日に取り立ててもらうのはどうかな?あいつ相当キレてる奴らしくて、この前も暴力事件を起こして休学してたって噂だろ。いくらか積めばうまくやってくれると思うぜ。」
ドーモト「それはいい考えですね。それでは、予算30万円のうちの3万円は、入場料を回収するための費用ということにしましょう。」
生徒B「残りの予算はふんだんに使って、豪華な劇にしましょうよ。その方が、見てくれた人も喜ぶと思うし。それに、余ったら返さなきゃいけないんだから、使わなきゃ損よね。」
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T組のキミシマ君も、クラスで会議をしていました。
キミシマ「過去の例を参考にすると、少なくとも200人くらいは見に来てくれるだろう。入場料は一人1000円だから、20万の収入はいけると見込んでいる。だから、ひとまず経費の予算を15万円にしておいて、さらに利益を増やすためには、何に予算を使うべきか考えてみようじゃないか!」
生徒C「お客さんを増やすには、まずは多くの人に劇のことを知ってもらわないとね。まずは学校中に宣伝ポスターを貼ってみたらどうかしら。」
生徒D「ゲストを呼んだらきっと盛り上がるぜ。俺の中学時代の同級生にヨシモトってお笑い芸人やってるやつがいるんだけどさ、最近それなりに人気でてきてるんだよね。本当は直での活動は禁止らしいけど、お金払ったらこっそり来てくれるかも。」
キミシマ「わかった、じゃあ予算15万円のうちの3万円は宣伝活動のための費用として使うことにしよう。」
生徒E「そうしたら、残った予算を使って見る人が楽しんでもらえる劇を作りましょう。劇の内容がよければ、リピーターとか口コミも狙えるし。でも、あくまでも目的は利益を増やすことだから、無駄な経費はできるだけ削るようにしないとね。」
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学園祭が終わり、それぞれのクラスではお金の集計をしています。
キミシマ「みんな、よくやってくれた。おつかれさま!劇には合計で300人が来てくれて、収入の合計は30万円となった。宣伝にお金を使ったこともあって、目標の200人より100人も多く来場者を稼ぐことができた。そして、経費の合計は12万円。みんなが効率を考えて経費を使ってくれたので、予算の15万円から3万円の削減に成功ということだ。その結果、差し引きで18万円の利益となった!」
生徒C「てことは、半分の9万円は打ち上げに使えるってこと!?はやく先生に報告しましょう。わーい、どこに連れてってもらおうかしら。」
・・・
ドーモト「皆さん、学園祭おつかれさまでした。入場券の販売数は800枚で、収入の合計は40万円でした。ミヤザキくんの恫喝が功を奏して、去年より200人も多くの生徒から入場料を回収できたみたいですね。まあ、彼は少しやりすぎて警察沙汰になったようだけど…。そして、経費の合計は30万円。これは予算通りですね。つまり、差し引きの収支は10万円のプラスということになりました。」
生徒B「なあ聞いたか?T組の生徒は打ち上げで焼肉に行ってるらしいぜ。俺たちもこの10万円を使ってパーっと打ち上げしよーぜ?」
チコ「ダメよ!このお金は生徒のみんなから集めたものなんだから、余ったらお返しするのが道義でしょ。」
生徒B「うわ、チコちゃんに叱られたー(笑)。けどさ、頑張って俺たちが回収した金なんだし、学園祭に関連するなら使うことは禁止されてないだろ?それに、もしこの10万円を返金したら、来年の入場料も下がっちゃうんだぜ。そんな自分の首を絞めることしてどうするんだよ。」
ドーモト「それもそうですね。余った10万円は私たちで使い切って、収支はプラマイゼロということで先生に報告しておきましょう。」
ストーリー解説・まとめ
このように、キミシマ君たちは経費を減らすことに成功した一方で、ドーモト君たちは経費を減らそうとしないばかりか、余った分を自分たちで使い切ってしまいました。
なぜこのような結果になったのでしょうか?
一言でいうと、ドーモト君たちにとっては経費を減らすことは自分たちのデメリットにしかならないからです。
キミシマ君たちは、「お金を稼ぐこと」を第一に考えるように先生に言われ、それに従って行動しました。そのため、利益を増やすためには、必要のない経費はできるだけ使わない方がいいと考えたのです。また、利益の半分を分け前(打ち上げ代)として使えることになっていたので、自分たちにとってもメリットでした。
ドーモト君たちも、決して担任の言うことに逆らっていたわけではありません。しかし、担任から目標とするように言われたのは、「生徒の役に立つ劇をやること」と「全員から入場料を回収すること」でした。そのため、経費を削減することは初めから頭に入ってなかったように見えます。また、結果としてお金が余ると、そのお金をお客さんに返さなければいけないだけでなく、来年の入場料も減少してしまいます。そのために、経費を減らすことは自分たちにとってメリットどころかデメリットしかない状況でした。
現実のNHKについても、これと同じことが言えます。
民間企業(T組)では、経営者(キミシマ君)は「利益を獲得すること」を株主(担任)から求められています。経営者が企業の利益を増やすことに貢献できれば、評価が上がり、見返りに高い報酬をもらうことができます。実際に民間企業では、「いかに効率よくお金を稼ぐことができたか(利益率)」が経営者の評価指標の一つになっていることが一般的です。
一方で、NHK(N組)では、経営者(ドーモト君)は「利益を獲得すること」を目的としていません。NHKに求められているのは、国民のための公共放送を行い、それにかかった費用を全ての国民から公平に集めることです。そのため、NHKの経営者にとっては、経費を削減しても自分が評価されることにはならないので、見返りがありません。また、予算が余ってしまい受信料の値下げが行われると、今後の経営が苦しくなり、NHK内部からの不満も高まります。
このように、NHKが受信料を無駄に使い続ける理由は、「受信料により運営しているため、経費を削減することはNHKの経営者や従業員にとってメリットがないため」と考えられます。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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