いきなりですが、NHKの衛星放送を見ている人は全体の割合いるかご存じでしょうか。
周りでどのくらいの人が見てるかというので何となく想像はできるかもしれませんが、正確な数字までは分かりませんよね。
実は、この割合はNHKの世論調査による統計データにより確認することができます。NHKは全国個人視聴率調査という世論調査を定期的に実施しており、その中で各チャンネルの週間接触者率というものを調べています。週間接触者率というのは、そのチャンネルを「1週間に5分以上見た人の割合」を表したものです。「テレビ・ラジオ視聴の現況~2018年11月全国個人視聴率調査から~(*1)」によると、NHK衛星(BS1・BSプレミアム)の週間接触者率は17.9%でした。つまり、NHKの衛星放送を1週間に5分以上見ている人は国民の5人に1人未満であるということになります。
さて、ここで一旦話を切り替えます。
NHKは、NHKが事業コスト(≒受信料)の1.8倍の価値を生み出していることを外部に向けて公表しています。そしてこの「NHKが生み出す価値」は、視聴者に対して実施したアンケートの回答結果を使って算定しています。
アンケートは次のような内容です。今回は衛星放送に絞っていますが、地上放送でも基本的には一緒です。
「あなたはNHKの衛星放送を見るためにいくらまで支払ってもいいと考えますか?」
そして、その回答をまとめたものが以下のグラフです。これは、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会(*2)」で、平成27年1月に実施した支払意思額の回答者分布としてNHKが提出したものです。
例として一番高い棒を見てみると、NHKの衛星放送に1000円~1249円払ってもいいと答えた人が292人と最も多くいたことが分かります。
しかし、皆さんはこのグラフを見て何か違和感はないでしょうか。
先ほど、NHKの衛星放送を見ている人は5人に1人(20%)未満ということを確認しました。そうであれば、NHKの衛星放送を見ていない80%以上の人はNHKの衛星放送にお金を払いたいと思わないはずです。それにもかかわらず、NHKの衛星放送に支払いたい額を「0円」と回答したのはたったの14人であり、全体のおよそ1%に過ぎません。普通に考えても、この調査結果は何か変ですよね?
NHKはこの調査結果を利用して、NHKは事業コスト(≒受信料)の1.8倍の価値を生み出しているという数字(VFM)を視聴者に向けて公表しています。これは、受信料が無駄に使われていないか、公共放送として価値のある番組を提供できているかなどを私たちが判断する上で、とても重要な情報です。しかし、このように元データが他の情報と大きく矛盾しているようでは、この数字を見てNHKが効率的に経営を行っていると判断することはできないでしょう。
このような矛盾が生じてしまう原因としては、大きく2つのことが考えられます。一つ目は質問の方法が適切でないこと、二つ目はデータの改ざん等が行われている可能性があることです。
繰り返しになりますが、NHKが受信料を使ってどれほどの価値を生み出しているかというのは、受信料を支払っている私たち国民にとってとても重要な情報になります。そのため、この指標が十分信頼できるということを国民に示すためには、NHKは次のような情報を開示することが必要だと考えられます。
- 回答データ及び算定方法の詳細
- 調査結果が他の統計結果などに照らして妥当と考えられるか
- 調査方法や質問内容が回答者の支払意思額を正しく反映させるために適切であるか
- 調査結果の操作や改ざんが行われないためにどのようなチェック体制を取っているか
最後までお読みいただきましてありがとうございました。よろしければ、以下の関連する記事もご覧ください。
今回ご紹介したVFMという指標がどのように算定されているかをまとめています。

VFMの算定方法や調査方法が適切であるかを検討しています。

参考リンク
(*1) 世論調査|NHK放送文化研究所
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