NHKが国民に与えているのは公益かそれとも公害か?客観的な数値で測定する方法を考えてみました。

NHKの受信料の問題
スポンサーリンク

はじめに

今回は、NHKの経営の成果を測る指標について考えてみたいと思います。

NHKの問題の一つとして挙げられるのは、NHKが国民に対して提供しているサービスに、私たちが払っている受信料に見合う価値があるのかを客観的に測りづらいことです。もしそれを客観的に表すことができれば、NHKにとっても国民にとっても、お互いの理解を深める上で有用であると考えられます。

というわけで、どのようにすればNHKが提供しているサービスの価値を客観的に計測することができるのかを考えてみました。

現在の財務報告

一般の企業の決算では、企業の経営成績を「損益計算書」で示します。これは簡単にいうと、企業が一年間にいくら利益を出したかを表すものです。株主はこれを見ることで、会社の経営が自分たちにどれくらいの価値を生み出したかを測ることができるのです。

一方、NHKは利益の獲得を目的としている法人ではありません。NHKは、公共放送のために必要なコストを国民から公平に集めた受信料で運営しているので、受信料による収入=放送事業にかかるコストというのが原則です。つまり、損益計算書の当期純利益を見たときに利益が出ていたとすれば、それは受信料を高く取りすぎているということを意味します。

つまり、損益計算書を見ても、NHKの事業が国民の利益になっているのかどうかを読み取ることはできません。言い換えるなら、NHKがいくら無駄遣いをしようとも、それがNHKの決算値に表れてくることはないと言ってもいいでしょう。

しかし、NHKの実質的な株主は私たち国民なのですから、本来国民は「NHKが効率的な経営を行うことができているのか」ということを国民が知る権利があるはずです。

昨今、NHK職員の給料が高すぎるとか、見たくないドラマを高額な予算で制作しているとか、色々と不満が噴出していますが、具体的に経営の成果を測る指標は存在していないですよね。ドラマに関していえばそもそも公共放送でやる必要がないということを言えばおしまいなのですが、今回はその議論は置いておきます。

このように、損益計算書に変わり国民がNHKの経営の成果を測る指標が求められているのではないかと思います。

「国民損益計算書」という考え方

一つの考え方として、「損益計算書」ではなく「国民損益計算書」というのを取り入れるのはどうかと考えています。「国民損益計算書」というのは私の造語ですが、NHKが国民に対して与えている経済的利益または損失を表すものです。つまり、NHKの事業は採算が取れるのか、それともそうではないのかを客観的に見れるようにしようというものです。もし採算が取れているのであれば、受信料は基本的に国民全体の利益のために使われているということができるかもしれません。

ただ、公共放送というのは採算が取れないことを前提としています。そのため、今回ここでお話するのは、ドラマやバラエティなどの公共放送として実施する必要がないことが明らかなものに限定して考えたいと思います。したがって今回は、例として衛星放送を取り上げます。

具体例その1

f:id:kkblog731:20190823012417p:plain

表1をご覧ください。これは、NHKの衛星放送に関する損益計算書を簡単なモデルで表したものです。ここでは、契約世帯数を2000万件、年額受信料を1万円としています。事業収入=事業支出であり、事業収支はプラスマイナスゼロです。この情報からは、事業支出の2000億円が本当に必要なコストであったかを判断することはできません

f:id:kkblog731:20190823014059p:plain
表2、NHKの衛星放送に関する「国民損益計算書」を簡単なモデルで表したものです。事業支出は損益計算書と同額の2000億円ですが、収入は損益計算書と異なり900億円になっています。

この「想定収入」というのは、仮にスクランブル放送を実施した場合にいくらの収入を得られるか想定される数値です。この例では、年額受信料3万円で契約世帯数300万件という想定をしていますので、その場合に得られる収入は900億円と算定しています。この想定をどうやって行うかは、世論調査などにより「1万円であれば契約する世帯数」、「2万円であれば契約する世帯数」を推定し、収入が最大化するポイントを割り出す方法などが考えられます。

この例では、国民損益の金額がマイナス1100億円となっています。これは、1100億円の経済的な損失を国民に対して与えていることを意味します。

f:id:kkblog731:20190823013929p:plain

また、この情報があれば受信料がどのように使われているかを割り出すことも可能です。表3をご覧ください。

非視聴者(月3万円で契約する意思のない人)が払っている受信料1万円の内訳は、視聴者のために負担している金額が4500円NHKの経営から出た損失を負担している金額が5500円となります。

視聴者(月3万円で契約する意思のある人)が払っている受信料1万円の内訳は、本来本来払うべき視聴料が3万円、そのうち非視聴者に負担してもらっている金額が2万5500円NHKの経営からでた損失を負担している金額が5500円となります。

具体例その2

f:id:kkblog731:20190823015456p:plain

今度は、経営が成功している場合を考えてみましょう(表4)。契約世帯数は先ほどと同じ2000万件ですが、事業支出が200億円少なかったと仮定しています。この場合でも、基本的には事業収支はゼロになるので、効率的な運営ができているのか、それとも無駄遣いが多いのかは判別できません

f:id:kkblog731:20190823015647p:plain

さらに、年額受信料2万5000円で契約する意思のある世帯数が800万件あったとします表5)。すると、想定収入は2000億円、国民損益は200億円の利益となります。このような結果であれば、NHKの事業は効率的に運営できており、国民全体に利益をもたらしていると評価することができます

おわりに

いかがだったでしょうか。今回は、NHKの事業が国民に利益をもたらしているかを数値で示す手段として、このような考え方を取り上げてみました。

実際このやり方をすればいいのかというと、そうは考えていません。むしろこれをやるくらいであればスクランブル放送を実施した方がずっと手っ取り早いと考えています。また、国民損益計算書で利益が出ていたとしても、放送を見ない人にとっては受信料全額が損失であることには変わりありません。

しかし、NHKの事業が国民全体の利益に貢献しているということを、もしNHK自身が示して国民の納得を得たいのならば、このような方法も考えうるという一例として挙げました。逆に、NHK制度を変えたいと考えている人でも、これらの統計を取ってNHKが国民全体に与えている影響というのを具体的な数値として提示することもできます。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

このように、このブログでは公認会計士としての知識や経験に基づき、NHKに関する客観的事実や論理的考察を発信しています。この記事が役に立つと思った方は、記事下のボタンからTwitter、Facebook、はてなブックマークなどでシェアして頂けたら嬉しいです。Twitterではブログの更新情報を発信していますので、もしご興味がありましたらフォローお願いします。

コメント