【第3回】スクランブル放送で「確実に」ぶっ壊れる!NHK崩壊シナリオのまとめ

NHKの制度改正を考える
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はじめに

このシリーズでは、「NHKのスクランブル放送が実施されると何が起こるのか」を検証していきます。

この記事は以下の続きの記事となっています。直接こちらをご覧になっている方は、先に第1回からお読み頂くことをおすすめします。

第1回では、もしスクランブル放送が実施されると、私たちの身の回りでは何が起こり、どのような結末を辿るのかを予測して、ストーリー仕立てでまとめました。

【第1回】スクランブル放送で「確実に」ぶっ壊れる!NHK崩壊の恐ろしいシナリオ
はじめに今回は、「スクランブル放送が実現するとNHKはどうなるのか」ということをお話したいと思います。こんにちは。公認会計士の草津と申します。会計士というと堅苦しいイメージがつきものですが、今回はできるだけ皆さんに興味を持って読んで頂...

第2回では、予測されるシナリオがどのような前提やデータに基づいて作成されているのかを一つずつ解説しました。

【第2回】スクランブル放送で「確実に」ぶっ壊れる!シナリオの内容を解説
はじめに今回は、「NHKのスクランブル放送が実施されると何が起こるのか」を検証していきます。この記事は以下の続きの記事となっています。直接こちらをご覧になっている方は、先に第1回からお読み頂くことをおすすめします。第1回では、もし...

この第3回では、このシナリオを通じて、スクランブル放送についてどのように考えるべきかという結論をまとめていきたいと思います。

注意:この記事中の記述は、いくつかの仮定を基に作成された将来の予測であり、フィクションです。

このシナリオを通じて伝えかったこと

今回のこのNHK崩壊シナリオでは、衛星放送にスクランブル放送が実施されると、視聴料の値上げが止まらず、最終的に事業撤退する結果となると予測しました。

このシナリオを通じてお伝えしたかったことは、次の2点です。

  • NHKが適切に経営を行っていないことは明らかであり、改善しない理由は見当たらない
  • スクランブル放送がNHK制度を改善するための最適な手段かを考える必要がある

なお、衛星放送のみのスクランブル放送を前提とした理由は、地上放送も含めると放送の公共性の議論が入ってしまうためです。公共放送としてのNHKが存続すべきか、それとも社会にとって必要ないかというのは経済的な価値からは図れない問題ですので、私が論じる立場ではないと考えています。そのため、公共性の議論は一旦外して考えるために、衛星放送のスクランブルに限定しています。

NHKが適切に経営を行っていないことは明らかであり、改善しない理由は見当たらない

NHKが受信料の無駄遣いをしているのではないかというのは、多くの国民が感じている疑問だと思います。従業員の給料が高いとか、新社屋が不必要だとか、NHKの金満体質を追求する声は絶えません。実際、今の受信料制度のもとでは採算性を考える必要がないために、予算内であればいくらでもお金を使っていいという考えに陥りやすいことは確かです。しかし、平均給与が1100万円が不当に高い水準なのか、新社屋の建設費用1700億円は建設会社との間の癒着により不当に高くなっているのか、などを理論的に証明するのは難しいと思われます。

そのため、今回のシナリオでは「衛星放送のスクランブル化をした場合には、月6480円の視聴料で競合会社と同等の顧客を維持しなければ存続できない」という想定を客観的なデータに基づいて導きました。多くの人から見て、これを達成することは不可能と言えると思います。つまり、NHKが採算性を度外視した経営により、国民全体に経済的な損失を与えているということは明らかであるということです

今回の参議院選挙では、スクランブル放送の実施を公約に掲げた「NHKから国民を守る党」が参議院の議席を獲得しました。もちろん、ワンイシュー政党であるN国党が今後過半数の議席を取ることはないでしょう。しかし、仮にN国党が改正放送法の法案を提出した場合に、他の政党はどのような対応をするでしょうか。

国民全体に明らかに不利益を与えているNHK制度の改正に反対する政治家がいるとすれば、その政治家は本当に国民のための政治をしていると言えるでしょうか

一方、反対する政治家からは「スクランブル放送を実施すると受信料が値上げされて国民にとって不利益になる」という意見が出るかもしれません。しかし、それは「既得権益者」を守る立場の意見であり、国民の正当な権利を主張していることにはなりません。なぜなら、今の制度では放送を見ない人からも受信料を徴収しているので、放送を見る人が本来負担すべき受信料は安く抑えられています。つまり、放送を見ない人からすると、放送を見ている人は知らず知らずのうちに「既得権益者」になってしまっているということです。

スクランブル放送が最適な手段かを見極める必要がある

このように、NHKの現在の制度を改善すべきという意見にはおそらくほとんどの国民が反対しないと思います。

スクランブル放送の実施というのは、ある意味分かりやすい解決策だと思います。つまり、見たい人だけでお金を払えばいいということです。衛星放送に絞っていえば、その考え方を否定する国民はいないでしょう。しかし、スクランブル放送の実施だけでは国民の利益が確保されるとはいえず、解決すべき課題が残されていると考えています。以下に2つの具体例を挙げます。

NHKから生じた損失を国民が負担し続けるおそれ

一つ目の問題は、NHKから生じた損失を国民が負担し続けるおそれがあるということです。

NHKには株主が存在せず、国民からの受信料を原資に事業活動を行っています。そのため、NHKが出した損失は国民全体が背負う構図になっています。つまり、NHKが国民からの受信料で成り立っているという構図が存在する限りは、NHKに払う受信料をいくら減らしても、結局のところ私たち国民が損失を負担することになるということです。

今回のシナリオでは、NHKの衛星放送は2年間で2800億円の損失を出してしまい、それを国民が負担しなければならないという結果となりました。この例では2800億円で済みましたが、仮に事業撤退が10年先であれば損失額は1兆4000億円です(それでも今の制度を存続させることによる損失と比べればよっぽど少ないと思いますが)。

また、考えられる別のシナリオとしては、衛星放送の損失を地上放送に付け替えることも考えられます。つまり、地上放送の受信料を値上げしてその値上げ分で衛星放送の損失を補うということです。それが行われてしまった場合に、最終的に損失を負担しているのは一体誰かというのはお分かり頂けるかと思います。

一つ目の問題に対する解決策の具体例としては以下が考えられます。

もしNHKが事業規模の縮小などの経営合理化を推し進めてからスクランブル放送を実施すれば、倒産したときの損失額は減らすことができます。また、もしかすると事業の存続が可能なレベルまで経営合理化を図ることができるかもしれません。

また、スクランブル化でなく民営化をすれば仮に損失を出したとしても、その損失が国民に跳ね返ってくることはありません。(ただ民営化をするのであれば、少なくとも経常的に利益を出せるというところまで持っていかないと買い手がつかないので、実際のところ難しいとは思いますが)

スクランブル化と同時に、債務超過になれば直ちに事業から撤退するという法整備を行うことも、国民全体の損失を拡大させないための一つの手段として考えられます。

急速な崩壊により、価値のあるものが消滅してしまうおそれ

二つ目の問題は、急速な崩壊により、価値のあるものが消滅してしまうおそれがあるということです。

例えば、今BSでやっているドラマを毎日楽しみにしている方も多いはずです。NHKの中には戦後から長年培ってきた技術やノウハウがあり、NHKの番組が国民の生活を豊かにしているという側面は否定できません。しかし、仮にスクランブル放送を実施してNHKが急速に崩壊に向かえば、それらが消滅してしまいかねません。これらの価値のあるものは、国民全体が共有している財産であり、消滅すると国民全体にとって損失となるといえます。

二つ目の問題に対する解決策の具体例としては以下が考えられます。

もし、一部の放送部門に限定すれば民間でも採算がとれるのであれば、民放への事業譲渡によってそれらの価値を残すというやり方も考えられるはずです。

結論

このように、スクランブル放送を実施すれば今のNHKの問題が解決するということではなく、解決すべき課題も多く存在しています。したがって、スクランブル放送を実施したらどういう結果が待ち受けているのか、もっといい方法はないのか、を私たちが考えることが大切だと思っています。

一つ誤解しないで頂きたいのは、決して「NHKから国民を守る党」が政策を考え直すべきだと主張しているのではないということです。むしろ、N国党から「NHKをぶっ壊す」という一つの問題提起をされたNHKや政治家、そして私たち一人ひとりが、スクランブル放送が最適な手段かということをしっかりと考える責任があると考えています。

おわりに

最後まで長文をご覧頂きまして、ありがとうございました。

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