はじめに
NHKの受信料は、ここ数年で少しずつ変わっているものの、依然として皆さんの中は次のような実感を持たれている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
NHK受信料ってこんなに払わないといけないの?
実際、民放だけでなくYouTUBEやNetflixなど、多様な動画視聴が可能な現代において、1つのチャンネルで年1~2万円の視聴料を支払うというのは、納得いかないこともあると思います。
この記事では、公認会計士の立場からNHKの過去の財務数値等を分析することにより、現在のNHK受信料が妥当であるかを検証していきます。
NHKの受信料の推移
以下の表は、NHKウェブサイトに掲載されている受信料の推移です。
消費税が5%になった平成9年に月額1,395円であった受信料ですが、令和元年の今年時点で月額1,310円となっており、およそ6%の減少となっています。(消費税の影響を考慮すると、およそ10%の減少)
しかし、この減少幅は妥当といえるのでしょうか。
受信料の額がどうやって決まるかについては、以下の別記事で解説しています。

NHKの財務数値等の推移
NHKの財務数値等の推移は以下の通りです。
ここから以下の事実を確認することができます。
- 平成17年から現在に至るまで、受信料収入は15%増加した
- 平成17年から現在に至るまで、NHKの支出は10%増加した
- 平成17年から現在に至るまで、契約世帯数は19%増加した
契約世帯数が増加しているということは、より多くの世帯でNHKを支えていることになるので、何となく一世帯あたりの受信料は値下げできそうですよね?
では、具体的にどのくらいの値下げができたのかを、次章で検証していきます。
NHKの受信料値下げは可能だったのか?
以下の前提をもとに、NHKの受信料をどこまで値下げ可能であるのかを検証してみましょう。
- NHKの支出は平成17年から変動しない
- NHKの支出を各年度の契約世帯数で按分して負担する
NHKの事業目的は「全国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行うこと」ということですので、支払う人が増えたからといって、それに連動して費用が増えるということにはならないはずです。そのため、運営費等は平成17年度から大きく変動しなくても、事業目的に沿った経営は可能であったと考えられます。
その前提に立てば、平成30年度に必要となる支出は6,349億円と仮定できます。
その支出を実際の契約合計数で割ると、一世帯あたりの受信料が算定されます。(ここでは簡潔にするため、地上契約と衛星契約の区別はしていません)
結果として、一世帯あたり受信料は、平成17年度の16,926円から16%減少して、14,200円と算定されました。
つまり、NHK受信料は過去13年間で16%の値下げが可能であったということです。
しかし、「NHKの受信料の推移」で見たように、受信料の値下げ額は16%を大きく下回っています。
なぜこのようなことになってしまっているのでしょうか。
値下げできるはずのNHK受信料は、なぜ値下げされない?
NHK受信料の値下げによって国民に還元されてしかるべきのお金は、いったいどこへ行ったのでしょうか。
私は、以下の2点が問題であると考えています。
- NHKは、受信料によって得た利益を国民に返還せず、剰余金として溜め込んでいる
- NHKは、本来値下げにより還元すべき受信料収入の増加分を、自らの規模拡大のための支出として使用している。
この問題については、詳細に説明すると長くなりますので、別の記事にしたいと思います。
まとめ
- NHK受信料は過去13年で少なくとも16%の値下げが可能だった。
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